留学生の姿

出稼ぎ留学生の姿に学ぶ

 

 私は、ほかの記事でも書きましたが、経済的な理由から、浪人時代に某うどんチェーン店でアルバイトをしていました。今回はその時一緒に働いていた東南アジアからの留学生に聞いた彼らの日常について話します。

 

 近年、日本では、外食産業を中心に人手不足が深刻です。これは特に東京などの大都市圏で深刻です。コンビニエンスストア、牛丼チェーン、うどんチェーン、ファミリーレストランの店員を見てください。外国人の方が非常に多いことが明らかです。場所によっては、日本人の方が少なく、外国人がスタッフの大半を占めているお店もたくさんあります。東京は日本の首都であり、他の道府県に比べて賃金水準が高いので、外国からの留学生が働き口を求めて殺到します。

 

 実際に、私が働いていたお店では、半分以上のスタッフが外国人でした。彼らの国籍は、ほとんどがベトナムです。特に、20歳前後の若いスタッフは5人ほどいたのですが、その中で日本人は唯一私だけでした。そのほかは全員ベトナム人です。彼らは日本語を勉強しており、たまに聞きづらいこともありますが、しっかりと日本語で接客をしていました。従業員同士で会話をするときにも、定番のメニューや仕事内容ならば、すんなりと会話ができたものの、ちょっとイレギュラーなことが起きた時など、意思疎通を図るのに苦労したこともあります。しかし、みな優しい方たちばかりで、一緒に働くうちにすぐに自分と仲良くなってくれました。

 

 ある日、私は仲良くなったある留学生に普段日本でどんな生活をしているのか聞いてみました。すると、次のような答えが返ってきました。

 「私は、日本にきて3年ほどになります。本国での生活が貧しいので、日本でお金を稼ぎに来ました。日本で働くために、日本語を勉強する必要があり、今も日本語学校に通っています。そして、その日本語学校の学費と、自分の日本での滞在費と、本国の貧しい家族に送金するお金を稼ごうと働いています。朝から午前中くらいまでは日本語学校に通い、午後の空いた時間でお金を稼ぐために、ここのアルバイトのほかに、別の飲食店とコンビニでアルバイトをしています。合わせて週6回ほどアルバイトをし、深夜にも働き、毎月20万円ほど稼ぐのですが、それでも全然足りません。生活費を削るために、家は6畳ほどの小さい部屋に、6人ほどで共同生活をしています。3枚しか布団がないので、寝るときは2人で1枚の布団で寝ます。睡眠時間は毎日4時間ほどです。(ちなみに、共同生活をしている人たちはみな知り合い同士でいそうだ。つまり、ほぼ見知らぬ人と毎日同じ布団で寝ているのだ。)」

 

 

 私はこれを聞いたとき、愕然とし、絶句してしましました。昨今ニュースなどで、日本への出稼ぎ労働者の問題が報道されていますが、ニュースで見るのは極端な例で、実際はそこまででもないだろう、と私は考えていました。しかし、自分と一緒に働いている留学生(=出稼ぎ労働者)があのテレビで見た出稼ぎ労働者よりも厳しい生活をしているのだと知るや否や、現実を強く思い知らされ、しばらく何も言えなくなりました。

 毎日終電で家に帰り、翌朝早朝の7時からここのお店で働く留学生もいます。

 

 

 そんな彼らに比べると、たったの1日4時間くらいの労働で、足が棒になっただの、疲れて動けないだの弱音をはいている自分の悩みなんて大したことないな思えてきました。

 

 何といっても、私は自分の学費だけ稼げばよく、彼らのように家族のために送金するお金までは稼がなくてもよいのです。加えて、家に帰ればあたたかいごはんもあるし、寝る時もしっかり1枚の布団で7時間も寝られるのです。

 

 

 もちろん、浪人生で1日4時間働くことだって、普通の浪人生からみれば並大抵の苦労ではありません。そして、この留学生の話聞く前、私は、「なんで自分だけがアルバイトをしなければいけないんだろう。自分の周りの浪人生は簡単に親にお金を出してもらえて予備校生活を送れているのに。」と、どこかまだ、自分の境遇に不満を感じていました。自分の高校の友人の生活水準しか知らなかったので、それが普通だと思い、なんて自分は恵まれていないのだろうと思っていました。しかし、この留学生の話をきいて、自分が思っていた「普通」は実はとても恵まれていることだったんだな、と気づかされました。

 

 日本語が多少通じなくても、毎日眠くても眠いなどと文句を言わず、必死に家族のために働く彼らの目の当たりにし、自分も今の環境に文句を言わず、自分で自分のための受験費用くらいは稼ぎ、環境に不平を言わず、浪人生活を乗り越えるのだと、と強く決心しました。

 

 それからは、今自分がやるべきことやれるだけ全力でやろうと思い、アルバイトにもこれまで以上に、勤務中はお店やお客さんの事を第一に考え、精いっぱい働くようになりました。そして、何よりも、苦しいと思っていた自分の日常を省みることで、少しずつ自分の環境に感謝できるようになりました。

 

 人は、自分が苦しいと感じているとき、大抵自分より恵まれている、あるいは能力があると思っている人と比べてしまっているのです。しかし、上を見てもキリがないのです。例えば、浪人生であれば、毎日楽しそうに大学生活を送っている(ように見える)同期と自分を比べて嫌気がさすことも多いでしょう。しかし、それは隣の芝生が青く見えているだけかもしれません。仮に、本当にその人が恵まれていたとしても、それは短期的な話であり、長い目で見た場合、それが本当に良いことなのかはわかりません。実際、私も浪人をして、アルバイトもして、苦しかったですが、この記事で書いたように、その時その場所でしか学べないこともあるのです。

 

 今現在苦しい思いをしている人がいたとすれば、いったんは比べるのはやめにして、現在の自分の状況を受け入れて、一歩一歩前に進んでいきましょう。そうすれば、今より毎日が充実したものになるに違いありません。